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おいしい記憶(エッセー) [社会]

3ヶ月前に読売新聞社と中央公論新社主催(協賛:キッコーマン)のエッセーコンテストに応募していた。

その結果発表が8月27日(日)の読売新聞朝刊であった。


応募総数:6,157の中から私のエッセー「農業体験とお昼ごはん」は選ばれなかった。

受賞者は東京に招待されてのイベントがあるとのことで、出来る限りイメージしていたが、現実は、私の脳内お花畑で終わってしまった。何かに応募して、審査されるというのは、貴重な体験をした。審査委員は確実に私の文章を目にしたのだから・・・。以下は私が応募した作品。

「農業体験とお昼ごはん」

20年前、息子と娘がまだ6歳と4歳の頃、農家である山口県の実家を利用して知り合い家族と『農業体験』を行った。裸足で田んぼに入り、昔ながらの手植えをする。一直線に植えるのが難しい為、父が作った竹の枠組みをひっくり返しながら前進していく。ぬかるみにハマって動けなくなる子供や、尻もちをついて泥んこになる子供。そんな触感や感覚は大人になっても覚えているはずだ。
お昼は、母が握った玄米むすびをほうばり、みんなでそうめん流し。今は亡き父が、山から『龍の形をした不思議な竹があった』と言って切って、節をくり貫いた竹の両サイドに子供達が群がる。ワイワイ、キャッキャッ言いながら、くねくねと曲がった竹の上流から流れて来る、生まれて初めてのそうめん流し体験に子供達は大はしゃぎ。「なんで、そうめんを流すの?」「風流だから?わからんけど、楽しいよね!」      
山の中腹から見る棚田は、まさに日本の原風景。最後は、全員で笑顔の記念撮影。
農業体験は田植えと稲刈りがワンセットで、春に植えた田んぼにたわわに実るお米を鎌で刈っていく。そして昔ながらのハゼ掛けを行うのだ。今はコンバインで稲刈りと同時に脱穀まで一気にやってくれる便利な時代になったが、いつも食卓に並ぶご飯が、こうして出来上がるのを体験するのは子供の人生に於いても貴重な体験だろう。というのも、当時参加した小学生の女の子のお父さんから「あの時の農業体験楽しかったね!」といまだに言うと年賀状で教えてくれる。
秋の収穫後の昼食は、実りの秋らしくバーベキュー。農家らしく、採れたてのジャガイモやニンジン、ピーマンなどの野菜尽くしの質素なのか、新鮮そのもので逆に豪華なのか分からないが、稲刈りという重労働の後の食事は何でも美味しい。
その後は、天日干ししたお米を雀や鳩に食べられないように全員で案山子(かかし)作り。家族毎に分かれて、個性ある作品作りに挑戦。最後は父に最優秀作品賞を選んでもらい、収穫したお米の近くに設置。かく言う私も案山子を作ったのは生まれて初めてだった。
少子高齢化で過疎が進む地域でもあるが、あんなに子供達の声が響き渡るのは久しぶりだった氣がする。
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に「一日に四合の玄米と味噌と少しの野菜を食べ」という文章が出てくる。私たちは古来より、お米と味噌と野菜を大切に育てて、食べてきた。そのお陰で子供達も大きくなり、立派な大人になった。
2年前に一生懸命農業を教えてくれた父も亡くなった。「農業体験」を子供達に教えてくれた先生としての笑顔の父の記憶と写真だけは、永遠に私たちと子供達の記憶には残っている。
父さん、ありがとう。

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kawaii155cm

残念でしたね。
たくさんの方が応募されたのですね。

情報がいっぱい詰め込まれたエッセイですね。
私もあれこれ応募しましたが、まだまだ苦労が足りないのでしょう。

他の応募者は障害と闘い、病気と闘い、ケガと闘い、認知症と闘い、と本当にすさまじい日々を送っておられる方々が応募されています。
「ほのぼの」といってもその深さが違うのでしょうね。
苦しい日々の中にちょっとだけホッとする時間やタイミングが訪れる。
そんな瞬間を切り取ってエッセイにされています。

「はるかぜさん」のエッセイ。
楽しかった思い出がみなさんの中に残って、一生の宝物になっていることでしょう。
これからも楽しいことをいっぱい探して、楽しいことの中で日々を過ごしていきましょう。

誰かを1番に選ばなければならないからねぇ。
応募された方々のすべての作品を記念に、冊子にして下さればいいのに。
それがあれば、十分満足!のように思います。

お疲れさまでした。
脳内お花畑で楽しませてもらって、それもよかったのではないでしょうか。
by kawaii155cm (2023-08-29 10:05) 

はるかぜ

おっしゃる通り、いろいろ詰め込み過ぎました。1200字とあり、原稿用紙3枚分って結構あります。小説家とか凄いですよね~1000枚とか書く訳ですから。でも今回、応募して結果待つまで結構楽しめたので、また何かに出稿してみようかな?とも考えています。
そう言えば、息子が小さい頃、車の絵を描くのが好きで、漫画「ヤングマガジン」に投稿したら掲載されたのを思い出しました。好きこそ、ものの上手なれで、文を書くことは好きなので、もっと追求してみたくもなりました。
この夏、親友とのバーベキューも「おいしい記憶」なので来年用に書こうかな?そっか、こうして毎回チャレンジする方も居られるんでしょうね!だから14回と続くのかもしれません。
ポジティブになれました。お慰めありがとうございます。
by はるかぜ (2023-08-29 11:48) 

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